書籍『入門Redmine』執筆の歴史を振り返る


My Redmine

こんにちは、前田です。

2006年6月25日にバージョン0.1.0がリリースされたRedmineは、先月18周年を迎えました。今回は周年らしい記事をなにか書こうと考えて、書籍『入門Redmine』のことを書くことにしました。


私はオープンソースのプロジェクト管理ソフトウェアRedmineの入門書である『入門Redmine』の第5版までの著者、そして第6版の監修者です。『入門Redmine』は基本的な使い方から設定の詳細な解説までをカバーし、多くの利用者の方にとってのRedmineのマニュアルとなることを目指して執筆してきました。

本記事では、2008年の初版から2024年の第6版まで、それぞれの版の歴史と改訂の背景を振り返ります。


各版の出版の歴史

第1版 (2008年)

2008年12月、日本におけるRedmineの人気が高まり始めている時期に、秀和システムから『入門Redmine』の初版が発売されました。この本は、おそらく日本はもちろん世界で最初のRedmineの解説書だったのではないかと考えています。

Redmineの作者であるJean-Philippe Langに巻頭言を書いていただいたほか、Redmine公式サイトでも紹介してもらいました。

巻頭言

執筆のきっかけ

『入門Redmine』を執筆することになったきっかけは、Redmineの情報サイト「Redmine.JP」です。

Redmine.JPは、前年2007年の10月に私が個人的に開設しました。当時は日本語で書かれたRedmineの情報が少なく、私自身がインストール方法などを調べるのに苦労した経験から、ネット上に分散しているRedmineの情報へのリンクをまとめたり日本語の情報を発信したりすればRedmineを使う方々にとって便利なのではないかと思い運営し始めました。記事を少しずつ増やしていった結果、半年ほどでGoogleで「Redmine」と検索するとRedmine.JPがトップに表示されるようになりました。

2008年6月のある日、Redmine.JPを見つけた秀和システムの編集者の方から、Redmineの本の執筆依頼のメールをいただきました。本を書くのはもちろん初めてですし、本当に書き上げることができるかも分からなかったのですが、本を書く機会なんて今後あるとも思えず、せっかくなので引き受けることにしました。

発売後の反響

慣れない執筆で大変な苦労がありましたが、秀和システムの編集の方の様々な支援のおかげで、なんとか発売にこぎつけました。発売後は予想を超える多くの人にご購入いただき、ありがたいことに何回か増刷されました。Redmineの人気が高まりつつあったタイミングで、唯一のRedmineの解説書を出版できたことは非常に幸運だったと思います。

今になって内容を見直すと情報量が十分ではないなど至らない部分が目につきますが、それでも多くの方々に購入いただき、読者の方々のRedmineの利用に役立てていただいたことは大変ありがたく思っています。初版をご購入いただいた皆さんの支えが第2版以降につながりました。

第2版 (2010年)

第2版は2010年8月に発売されました。この版は非常に短い期間で執筆した記憶があります。会社から一旦帰宅して夕食をとった後、再び会社に戻って夜遅くまで執筆するという日々を繰り返していました。

第1版の内容については、操作方法とインストール方法に偏っているという問題を感じていました。そこで、プロジェクトを管理する立場の方がどのようにRedmineを活用できるかをしっかり書くことが重要だと考え、第2版では「プロジェクト管理者編」を新たに加えて、プロジェクト管理者向けの利用方法を紹介しました。

第2版も多くの方々にご購入いただきました。また、第2版発売を機に、当社が運営するクラウドサービス「My Redmine」を新たに契約いただいた方に本をプレゼントしはじめました。お客様への本のプレゼントは1年少々中断した時期があるものの、現在も継続しています。きちんと集計していませんが、おそらく累計で数千冊の『入門Redmine』をクラウドサービス「My Redmine」のお客様にお届けしたのではないかと思います。

第3版 (2012年)

Sphinxの採用

2012年8月に発売された第3版は、執筆プロセスにおいて大きな変化がありました。第2版までは原稿をWordで書いていたのを、オープンソースのドキュメントツールであるSphinxに切り替えました。当時のMac版Wordでは、数百ページにも及ぶ原稿を扱うと動作が重くなったり、図表番号が狂ったりする問題に悩まされていました。Sphinxに移行することで、使い慣れたテキストエディタで原稿を書くことができるようになり、執筆効率が大幅に向上しました。また、バージョン管理システムを使った更新管理も行えるようになりました。

その後の版にも引き継がれる構成の見直し

第3版では、書籍の構成を大きく見直しました。Redmineの主要機能ごとに、一般利用者視点とプロジェクト管理者視点の双方から説明する形式に変更しました。これは、Redmineの利用方法が一般利用者とプロジェクト管理者で完全に分かれるわけではなく、一般利用者であっても俯瞰的な視点でRedmineを利用することが多々あるという認識に基づいたものです。

一つの区切り

新しい章立てで完全に書き直された第3版は、『入門Redmine』シリーズの歴史の中で一つの大きな区切りとなり、第2版以前と第3版以降は別の本のように感じます。第3版の構成は第4版以降のベースにもなっていて、この構成を元に継続的な改善を行っていきました。

第4版 (2014年)

第1版から第3版までは試行錯誤の連続で、毎回大きく構成が変わり、それぞれがまるで全く異なる本のようでした。しかし、2014年12月に発売された第4版は、第3版の構成をベースに章立ての改善と内容の充実を行ったもので、ようやく「改訂版」といえるものになったと思います。

スクリーンショットの改良

第4版から、スクリーンショットについては著者側でそのまま印刷原稿として使えるデータをIllustratorで作成するようにしました。これにより、矢印や文字を加えるなどの加工を思い通りに行えるようになり、スクリーンショット内の情報量を増やすことができました。よりわかりやすい説明ができるようになったと自負しています(その分作業量は大幅に増えましたが…)。

利用事例の追加

巻頭に複数の利用事例を載せるという新たな試みも行いました。これにより、Redmineが実際にどのように活用されているかを具体的に示すことができ、読者がRedmineの活用方法をイメージしやすくなったのではないかと思います。

第5版 (2016年)

2016年12月に発売された第5版は、私が著者として執筆した現時点では最後の版です。この版では、Redmineの利用分野や利用者層が広がってきたことに対応し、第4版までのシステム開発での利用を想定した説明を改め、なるべくシステム開発から離れた一般的なタスク管理を例とした説明に変更しました。

チュートリアルの充実

初めてRedmineを使う人が適切な設定を行い、スムーズにRedmineの基本機能を理解できるよう、チュートリアル的な内容を増やしました。特に、Chapter 6「新たなプロジェクトを始める準備」では、Redmineを利用する上で重要な概念であるトラッカー、ステータス、ワークフローの説明を詳しく記述することに努めました。

物語風の章の追加

編集者の強い要望で、バーベキューの準備を題材にRedmineを活用する物語風の章を追加しました。書き慣れない分野の文章なのであまり気乗りがしなかったし大変苦労しましたが、Redmineの基本設定と基本的な使い方をコンパクトに説明できる読み物ができたと思います。

第6版 (2024年)

第5版までは概ね2年ごとに改版が行われてきたのですが、その後私が第6版のための執筆をなかなか進めることができず、8年も間が空いてしまいました。これだけ長い間放置していたにも関わらず、秀和システム様から改めて第6版をなんとか進めたいとのお話をいただきました。そこで、著者を当社社員の石原佑季子さんに引き継ぎ、私は監修者となるという新たな体制で仕切り直しを行いました。

第6版は新体制での執筆を2023年9月に開始し、2024年3月に発売されました。第6版の最優先の目標はRedmineの最新バージョンに対応させることでしたが、それだけにとどまらず新しい試みが行われました。

フルカラー印刷

第6版では全ページフルカラー印刷となり、スクリーンショットが大変見やすくなりました。第4版まではモノクロ印刷、第5版は原則モノクロ印刷で、マークアップのリファレンスで一部2色刷りでした。

カラフルな校正用の紙面を見たとき、想像以上の読みやすさに驚いた記憶があります。

Redmine 5.1対応

対象のRedmineのバージョンは第5版では3.3でしたが、第6版では5.1になりました。8年分の機能や画面の変化に追従するため、全体的に記述内容の大幅な変更を行いました。また、スクリーンショットはほとんどが撮り直しとなりました。

物語風の章のテーマをバーベキューから社員旅行に差し替え

第5版で追加された、バーベキューの準備を題材にRedmineを活用する物語風の章「バーベキューの段取りでRedmineを体験してみよう」は、第6版では社員旅行が題材の「社員旅行の段取りでRedmineを体験してみよう」に書き換えられました。

この社員旅行は、本当は私が書くはずだった幻の第6版のために、2019年4月に実際に香港・マカオ・深圳に行ったものです。執筆を前提に、旅行の準備は専用のRedmineを使って進めました。このような経緯から、第6版36ページに掲載されている写真はすべて5年前のものです。

そのときのRedmineのデータがようやく日の目を見ました。

顧客サポートの経験を活かした内容追加

新しい著者である石原さんは、長年My Redmineの顧客サポートも行ってきました。その経験を活かして、よく問い合わせがある内容に関する記述を増やしています。新しい章として追加した内容もあれば、第5版の文章を改善した箇所もあります。

まとめ

2008年に『入門Redmine』を書いたときには、まさか第2版以降に続くとは思いもしませんでしたが、多くの読者の皆さんの支えにより2024年の第6版まで進化を遂げてきました。これまで『入門Redmine』を手に取ってくださったすべての読者の皆様に感謝申し上げます。

引き続き、『入門Redmine』をどうぞよろしくお願いいたします。

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