前田です。2026年8月8日・9日に台湾で開催された「COSCUP 2026」で発表しました。COSCUPとは毎年夏に台北で開催されるオープンソースに関する大規模なイベントで、多数の講演が行われます。
今回の発表タイトルは「Adding Right-to-Left support to your web application with CSS logical properties — Lessons from Redmine」です。RedmineのRTL(Right-to-Left、右から左に記述する言語)対応をCSS論理プロパティを使って改善した経験をもとに、既存のWebアプリケーションをRTLに対応させるために最低限何をすればよいかを紹介しました。
発表は中国語で行い、スライドは英語で作成しました。中国語で発表したのは、会場が台湾であることと、個人的に普段学習している中国語のほうが英語よりも話しやすいためです。そして英語でスライドを作成したのは、中国語を理解していない参加者にも内容が伝わるようにするためです。
COSCUPでの発表は3年ぶり2回目で、前回も中国語で発表し英語でスライドを作成しました。そのときは「中国語初級者が台湾のCOSCUPでの発表をやりきるためのスライドづくり」という記事を書きました。
今回は3年前の反省を踏まえてスライドの作り方を変更しました。本記事では、外国語が不得意な私による、COSCUP 2026で実際に行ったスライド作成から中国語の台本作成までの手順を紹介します。
今回の発表では、前述の通り発表は中国語、そしてスライドは英語です。ただ、スライドの作成過程ではこの2つの言語に加えて日本語も使っています。
言語の使い分けは以下の通りです。
| 言語 | 用途 |
|---|---|
| 日本語 | 発表内容を考え、最初のスライドを作る |
| 英語 | 本番で参加者に見せるスライド |
| 中国語 | 話すための台本、本番での発表 |
最初に日本語でスライドを作りました。
最終的には英語のスライドが必要ですが、私は物事を日本語ではなく外国語で考えることはできません。そのため、英語でスライドを作成しようとすると、スライド内のテキストを書いたり、書いた内容を修正したりするのにいちいち翻訳が必要で時間がかかり思考も途切れがちです。前回はまさにこれが原因の一つとなり、スライドの作成に非常に時間がかかりました。
そこで、まずは日本語でスライドを完成させることにしました。構成を考えてスライドに落とし込むという作業が普段通りのやり方でできるので、必要以上に時間をかけることなく日本語版スライドを完成させることができたと思います。
ただし、スクリーンショットや図表まで日本語で作ると、英語版を作る際に作り直す必要があり、それには相当の時間がかかります。そのため、これらは最初から英語で作成しました。
今回のスライドには、日本語版でも本番用の英語版にも実際に話す内容に近い分量のテキストを入れました。
一般的にプレゼンテーションのスライドは文章をあまりたくさん書かないほうがよいと言われます。しかし、今回は2つの理由で文章を多めに入れました。
1つ目の理由は、後の工程で中国語の台本を作るための入力として使うためです。日本語で考えている過程で話す内容も考えてスライドに入れておけば、制作時間を短くできます。このテキストは次の工程での英語版制作のときに英訳されます。その英訳されたテキストを中国語に訳したものを中国語の台本のベースにしました。
2つ目の理由は、中国語を話さない参加者への配慮です。話す内容に近い内容のテキストがスライドに書かれていれば、中国語を理解しない参加者でも発表内容を概ね理解することができます。
つまりスライド上の多めのテキストは、発表者である私にとっては中国語の台本を作るための材料であり、参加者にとっては中国語を理解できなくても発表内容を追うための手がかりです。
日本語版が完成したら、それをもとに本番用の英語版を作りました。
この段階では発表の構成や内容はすでに日本語版で決まっています。そのため、「何を話すか」を考える必要はなく、英語への翻訳に集中できます。
翻訳にはChatGPTを使用しました。プロンプトでは「Plain English」への翻訳を指示することで、非ネイティブにも比較的読みやすい平易な英語を出力させました。平易な英語を出力させるのは参加者のためだけではなく、私が訳文をチェックしやすくするためでもあります。
翻訳の過程で、元の日本語のわかりにくい箇所・おかしな箇所も明らかになるので、元の日本語の表現を改善してから再翻訳するといったことも行いました。
英語版のスライドが完成したら、次に中国語の台本を作りました。最終的に参加者が見る英語版をもとに中国語の台本を作ることで、スライドに書かれている内容と実際に話す内容を対応させました。
ここでもChatGPTを使いました。英語スライドの内容をChatGPTに渡して、中国語で話すための文章に翻訳します。
外国語の台本では内容の正しさだけではなく、自分が実際に口に出して話せることも重要です。そのため、ChatGPTのプロンプトでは、本番で私が話しやすいよう平易な話し言葉に翻訳するよう指示しました。出力された文が自分にとって話しにくそうなものであれば、別の平易な言い換え表現を提案させました。
作成した中国語の文章は各スライドの発表者ノートに入れ、本番ではそれを見ながら発表しました。
3年前のCOSCUP 2023では、英語のスライドに中国語と英語の字幕を入れていました。
中国語の発音がうまく伝わらなくても字幕を見てもらえば内容を理解してもらえると考えたためです。また、中国語を理解できない参加者にも英語字幕で話している内容を伝えられると考えました。
良いアイデアだと思ったものの、字幕を作るにはかなりの手間がかかりました。また、スライドに表示する英文、字幕表示用の英文、実際に話す中国語文の3種類を並行して作るのも大変苦労しました。結果、スライド作成に時間がかかりすぎ、発表の練習時間がほとんど取れませんでした。
そこで前回の反省をもとに、今回は字幕は作りませんでした。話すのに近い分量の英語テキストをスライドに入れたことで英語字幕を作る必要性は低くなりましたし、また3年前と比べれば私の中国語の発音も多少は良くなっているはずなので、字幕がなくてもある程度は通じるはずだと考えました。
ここまでの過程を経て、以下のスライドが完成しました。
私の中国語は3年前よりはかなり改善したものの、発表のスムーズさという点ではまだまだ満足できるものではありませんでした。もっともっと練習が必要です。とはいえ、発表後には質問もいただき、参加者には内容が通じている感触はありました。
スライド作成については、最初に本番では使わない日本語版を作ってから英語版を作ること、スライドにはテキストを多めに盛り込むこと、そしてそのテキストをもとに中国語台本を作り、発表者ノートに入れておくというやり方はうまく機能したように感じました。そのおかげで、3年前とくらべるとかなり落ち着いて発表することができました。
海外カンファレンスで外国語を使って発表するとなると、私にとっては日本語での発表よりもかなり難しいです。しかし、スライドと台本を作る工程の工夫により難しさを下げることができました。
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